多くの健康法が注目を浴びるなか、漢方針灸といった東洋医学への興味も高まっています。書店へ行くと数多くの東洋医学関係の本を目にします。指圧、ツボ、気血、解毒等、どなたも御存じです。

でも皆さんは、「何故ツボが効くのか?」と、疑問に思ったことはありませんか?また日本人の方々は、一般に漢方薬は長期服用しないと効き目がないと、思われてませんか?症状によって、短期服用ですむものもあります。また、ただ服用し続けるのではなく、薬を飲まずに自分の症状がどうなっているのかを観察する期間も必要なのです。

皆さんに、中医学を御理解頂くと同時に自己の症状に合わせ、どんな治療したらいいのか、医療の使い分けの参考にして頂けたら幸いです。

健康というと、ただ身体の事に気をとられがちですが、身心ともに健康である事が重要です。例え身体が病んでいても、心が豊であれば幸せといえるでしょう。逆に五体満足で、日常の生活に不自由がなくても心が満たされず不幸を感じる人もいるでしょう。何故人は健康で長生きしたいのか?健康で長生きをする事はどんな意味があるのか?考えた事がありますか?

チベット医学というのがあり、チベット仏教のお坊様が医師を兼ねていました。何故お坊様が、医師もしていたかと言うと、人が病気になるのは、欲望、煩悩が深く関わっているので、精神修養をする事で、病気から逃れると考えているからです。俗世間で生きていれば、いい事ばかりではありません。避けたい事もありますし、欲も出てきます。どうしょうもなくて飽きらめる人、明日に向かって頑張る人、あるがままを受けとめて自分の喜びにつなげて行く人等、各々の性格つまり思考方法に依って、同じ状況におかれても不幸にもなり、幸福にもなります。

病気も同じです。日本にも”病は気から”と言う言葉がありますが、病気は自分の生活習慣、思考方法でつくられるものです。であれば、生活習慣や思考方法を見直し、立て直す事で苦痛を和らげ、病気を治していけるわけです。つまり、健康で長生きするという事は、自己を見つめる時間を多くもち、人性という精神修養の場を有意義に幸福に過ごす事です。その手助けをするのが、チベット仏教のお坊様でありチベット医師なのです。現在はお坊様と医師を兼任する事はできません。しかし、この理論を基礎とし、病人が自己治癒能力を発揮できるように手助けをするのが中医学であり、チベット医学、東洋医学です。

中医学では、薬のことを中薬(チョンヤオ)と称しますが、日本では漢方薬で知られています。これは、”漢から来た薬”と言う意味で、内容は同じです。この中薬、針灸、指圧、推掌(ツイナ)、整体等を使って治療を行うのが中医師です。残念ながら日本にはまだありません。シンガポールでは、西医師(一般に言う医師)と同様に、国家試験に合格し登録された中医師によって治療が行われます。さて中医学とは、どのような医学で、中医師はどのようにして治療をおこなっていくのでしょうか?

中医学の基礎となるものには、陰陽学、五行学臓府学経絡学などがあります。勿論、中医師は西医師と同様に医学の基礎を学んだうえで中医学特有の理論へ進みます。中医学の根本を成すのは“人体は自然の一部であり、あらゆる生命体は相互に影響しあいながら存在する”という理論で、身体に現れる症状と自然現象を同様のものと考えます。人は、外界の影響(外因)と、自らの心理状態(内因)の双方からの刺激受け、それによって身体に異常が現われ、病気になると考えます。

身体に出現した各々症状のことを”症”とい言います。患者さんの訴える事だけでなく、患者さんの舌の色、脈、顔色、体臭、声等全ての”症”を良く観察します。問診(症状を尋ねる)、望診(見る)、切診(触れる)、聞診(臭いを嗅ぐ)この4方面から診察をし、”症”を分析し原因を探っていきます。これを中医学では”四診”と称します。その結果でたものを”証”といい、それに即した治療法を決定していきます。

例えば、頭痛といっても、痛み方、痛む位置、痛みが酷くなる時間などにより、原因が違ってきます。中医学では、頭痛を9つの”証”(タイプ)に分類します。風熱、風寒、風湿、鬱血、痰、肝陽(のぼせの様な症状)がある為に起こる頭痛と、腎虚、血虚、気血虚といった、弱って起こる頭痛、と各々に応じ処方する薬や、針を刺す経穴(ツボ)、指圧する経穴を選んでいきます。

つまり、中医学は、オーダーメイドの治療法なのです。身体に現れている不調や異常、これらは皆身体からの注意信号です。従って、この”症”に対して”証”を割り出し、未だ病名のつかない、病気とは未だ言えない”未病”の段階で治療を行なえる”予防医学”でもあるのです。

では、どの様にして、分析していくのでしょうか?
先にも記した様に、中医学の基礎となるものには、陰陽学、五行学、臓府学、経絡学が、あります。中医学では、病名(高血圧、風邪、胃潰瘍等)より、身体に現れている症状を重視し、上記の論理に基ずき、症状を分析し治療方針を決定していきます。

陰陽学と五行学は、耳にされたことがあるかと思います。存在するものを組分けする方法です。天地の分かれる前の世界を“太極”と言い、この太極が動いて陽が生まれ天となり、沈んで陰が生まれ地になり、天地が出来たと古人は考えました。そして全ての存在は、両局面(陰陽)を持ち合わせているとし、陰陽学が発展しました。陰と陽の組分けは解かり易いのではないでしょうか?只一つ覚えておいていただきたいのは、陰は只陰ではなく陽も只陽ではなく、各々中にも陰陽があるということです。例えば、夜は陰ですが、夜明けが近ずくにつれて、陽の要素も含まれて、やがて陽の朝に変化していきます。

“陰”と言うと、どこか暗いイメージがありますが、中医学では“休息、栄養”と言う意味があり、反して“陽”には“活動、消耗”と言う意味があります。活動の後は休息、栄養を取ったら消耗させる、そして陰陽のバランスが保たれていくわけです。どちらかが過剰になったり、不足したりする事で身心ともに病むのです。

ここで、陰陽の関係をまとめてみましょう。

まず第一が「相互交感」、
陰陽は交わることでひとつひとつの存在、現象を生み出します。男女からひとつの生命が誕生する、といったことです。

第二は「陰陽互根互用」、
陰陽は太極から分かれてできたので、源は同じで、互いに存在を支えています。

第三は「陰陽対立制約」、
寒と熱、水と火といった対立関係のことです。病気の症状と治療に例えると、熱があったら冷ます、寒気がしたら暖めるといった対立の存在の中にあって互いに助け合い、抑制しあってバランスを取ることです。

第四は「陰陽相互転化」、
朝は昼となり夕方を経て夜になります。人間でいえば、長所だと思っていた所が、見る人によっては短所に、短所が長所にと、捉え方が変わり、どちらにでもなり得るといったことです。

最後に第五が「陰陽消長平衡」、
陰陽の過不足、増進、あるいは消耗のことを言います。増えたり減ったりしながら互いに成長を促していきます。

これらの陰陽の作用を人付合いにおきかえると、人間は皆平等、支え合い、制約しあい、時には立場を換え、相手を励ましたり、励まされたりと、関係を保って友情、愛情を育てていくのと同じだはないでしょうか?

中医学の治療において、症状から身体の陰陽の偏りが、どうなっているのか、どんな理由でそうなっているのか、陰が多すぎて寒いのか、陽が不足しているので寒いのかということを見極めます。そして上記した陰陽の作用が整うように、過剰なものは除去し、不足しているものは補い、症状に抵抗して頑張っている機能は助けてあげます。その方法は、中薬(漢方薬)、針灸、整体、気功、運動、食事法などです。

例えば、喉が渇くという症状が、体の火照りが原因であれば、火照りを除去することに重点がおかれ、陰(体への水分、体液)を補うのは、補佐となります。逆に陰が足りなくて渇いてる時は、陰を補って潤すことに重きをおき、体に陰が行き渡るように機能を助けて渇きを治していきます。ここで言う機能とは、生理学に由来するものではなく、中医学の臓腑学に基づく各臓腑の役割と、五行学が関係してきます。例えば、気血の循環の善悪しは、心臓だけでなく、症状に依って、肺や肝臓にも関係してきます。

さて世界が天地に分かれた後、自然現象が起こり、物質、生物、人間が存在し始めました。古人は、あらゆる存在を、当時の人間生活に不可欠な素材である、木、火、土、金、水の5つを選び、各々の基本的性質及び要素に当てはめ、分類しました。このように分類することで、それら個々の性質を理解すると同時に、それらの動きや変化によってもたらされる相互関係を理解してきました。”木の特性は生長、伸びやかさ”、”火は上昇、温熱”、”土は収獲、育てる”、”金は収斂、変革を通して生産”、”水は潤い、下降、寒涼”この様に表現されます。身体の各部及び生理現象を5つに分類した一部を見て下さい。

5つのグループの関係は、まず“生産、助ける”ことです。木は火を生み、火は土を生み、土は金を生み、金は水を生み、水は木を生み、一つの円を作ります。これを臓器に置き換えると、肝臓は心臓を生み助け、心臓は脾臓を生み助けると言う具合いに以下つずき、腎臓は肝臓を生み助ける処で一周します。この法則に照らし合わせると、もし心臓に何らかの異常があるとしたらば、ただ心臓を治すだけでなく、心臓を助ける肝臓、心臓の影響を受ける脾臓にも気を配らなくてはなりません。

それとは別に、“相克”、相手に勝つ、相手の物を吸収する、或るは抑制すると言う関係があります。木は土に克の意味は、土から栄養を吸収し生長することです。土は水に克は水の氾濫を抑える事、水は火に克は火を消す事、火は金に克は金を溶かす事、金は木に克は木の伸び過ぎを抑える事です。これが中医学の治療のなかで抑制の作用です。。例えば胃が悪い時、土の胃を助ける金の肺に協力を求めるだけでなく、土に克木の肝臓の勢いを抑え栄養を取られないようにする中薬(漢方)や経穴(ツボ)を決定していきます。そうする事によって、身体のバランスを整え、病気の表面を治すだけでなく、身体内部に潜んでいる病気の根源を治し、再発を防いでいくわけです。 

中医学は病気(病名)を治すのではなく、身体に起こっている変化、身体が発している注意信号に対して治療を行なうのです。未だ病名の付けられない症状、未だ病気と判断できない病気を“未病”とし治療するのです。

臓腑学とは、簡単に言うと、五行学で分類された内蔵の生理功能、そして身体に現われる病理現象をまとめたものです。陰陽学、五行学と合わせて基本を知っていると、自分の症状に対して何に気をつけたらいいのか理解が深まります。

肺を例にとると、生理現象は呼吸、病理現象は咳や喘ぎとなります。風邪をひいた時、咳、鼻水、鼻詰まり、熱、腹痛、吐き気といった症状がでたとします。陰陽学と五行学(木火土金水)の表を見て下さい。。肺は五官の鼻、体液の鼻水に関係しています。また肺と陰陽の関係にあるのは大腸で、五行の金のグループに共に属しています。肺が弱れば、自然と大腸にも影響がでて、腹痛がおこります。。また、風邪のひき始めに、吐き気がしたり、食欲が無くなったりするのは五行の関係で、脾臓と胃の土が金の肺を生み助けるバランスが崩れるからです。逆に言えば、胃が弱った為に風邪をひくともいえます。

このように身体に現れる症状は、内臓の調和が崩れ、生理功能に異常が起きた時にでてきます。そしてその出かた、出る箇所がきちんと分類されているのです。一見複雑に思える症状も、これらの理論に照らし合わせると、はっきりしてきます。

身体からの注意信号を受け取ったら、五行の表に照らし合わせ、どの臓器をいたわってあげたらいいのか、自己診断してみましょう。

  • 2008-10-13 (月) 11:26

Home > 中医学とは

Return to page top